大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和33年(あ)1376号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人木村賢三の上告趣意第一点ないし第四点は、単なる法令違反、事実誤認の主張を出でないものであり、同第五点は、判例違反をいうが、所論判例は本件に適切でないから、その前提を欠くものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条一号、三号を適用すべきものとは認められない。(職権をもって調査すると、原判決は、第一審判決の判示第二および第三(一)(二)の事実認定並びに法令適用には誤がないものとして、これに対する控訴趣意を排斥し、ただ第一審判決の判示第一事実についてはこれを確認すべき証明が不十分であるとして第一審判決を破棄したのである。しかるに、原判決は、刑訴四〇〇条但書により更に自ら第一審判決の判示第二および第三(一)(二)と同一趣旨の事実を同一証拠(但し判決に影響を及ぼさないと判断した実況見分についての報告書を除く)をもって認定判示しているのである。しかし、控訴審は、事後審であって、覆審ではないから、第一審判決の事実認定に誤認も違法もないとしてこれを維持した以上更に自ら改めて事実認定をなすべきものでないこというまでもなく、従って、原判決の前記措置は違法であるといわざるを得ない。しかし、原判決の事実の認定、証拠の説明等は、第一審判決と同旨であって、原判決が第一審判決を破棄して法律適用をするに当り第一審判決事実を引用したと同一に帰するから、右の違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するほどのものとは認められない。)

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例